センターからのお知らせ

2/3、多摩シンポジウム×地域交流DAYを開催-学生と地域が「共に育ち合う」ために必要なことを考えました

2/3(金)、第32回多摩シンポジウム×地域交流DAY2016『まちを育てる学生、学生を育てるまち』を開催しました。

第1部では、地域で活動する学生団体13チームが2016年度を振り返って成果と今後の課題を報告し、会場からも「学生が感じている以上に地域に良い影響を及ぼしている」といった評価の声が挙がりました。

第2部は、各地でまちづくりに携わってこられた延藤安弘さん(NPO法人 まちの縁側育くみ隊 代表理事)が「物語りのように若者と住民が共に育ちあう――大学・地域 “まちing”を目指して」と題して講演を行いました。まちづくりにおいて、自由な発想で人々にとって「ほんとうに大事なもの」を見出すことの大切さ、誰もがちょっとしたことで人との関わりの場を創れる可能性をもつこと、土地の「宝」を再発見することの重要性などについて、絵本や多彩な写真を材料に語り、大いに触発される場となりました。

◎開催概要:詳しいプログラムや講師のプロフィール等はこちらのチラシをご参照ください。

当日は、日頃学生たちと地域で連携してくださっている方々をはじめ、福祉分野や市民活動の中間支援組織の方々、他大学関係者など100名を超える方々に来場していただきました。報告側の学生団体の学生たちや学内の教員まで合わせると約140名が会場のエッグドーム5階ホールに集っての開催となりました。

 

 

■■■■ 第1部 学生の活動報告会 ■■■■

2016年度に多摩地域交流センターに登録して活動を展開した学生プロジェクトは13チーム。報告のプレゼンテーションは1チーム5分ずつと限られた時間でしたが、それだけにどのチームもポイントを絞って発表していました。多くのチームが発表者に1年生を加えて、次年度に向けたチームメンバーのステップアップの機会としても位置付けている様子がうかがえました。

発表(写真は後掲)のなかから浮かび上がった主なポイントは次のような点でした。

■なぜ、活動するのか?

▽たまぼらゆくのきプロジェクト――Story of I, Story of our Team, Story of Now

個人としての動機・問題意識を出発点にしつつ、活動は仲間と共に「チーム」として、複数の視点で展開することに価値を見出している。そのうえで、現在の社会課題(子どもの貧困や不登校)も踏まえたいと述べて、“地域活動サークル”に所属して、今、活動することの意味を浮かび上がらせてくれました。

■チームのメンバーをいかに活動に巻き込むか

▽たまぼらやまなみプロジェクト――1年生の活動定着、参加率に課題が残った。来年度は活動内容自体をより魅力あるものにするとともに、メンバー間の関係性についても、チームとしての団結を深めたい。

課題を率直に認める発表でした。発表で触れなかった他の多くのチームにとっても課題となっているテーマですが、一方で「さんかく」のように、大学から離れた従来の活動地域(多摩市永山団地)のほかに、新たに大学近くの団地に活動地域を広げたことで参加が増えたという報告もありました。

■農業の収穫物の「商品化」をどう考えていくか

たまぼらやまなみプロジェクトのハーブ、たまぼら佐野川プロジェクトのお茶、Community Fieldの野菜の栽培にあたっては、収穫したものをどう活用するかが課題として学生たちから挙がりました。検討すべき一つの方法として「商品化」に触れていたのに対し、講評では「地域の産物との違いをどこに見出して価値づけていくかや、コミュニティビジネスとして地域内に循環をつくって貢献できるかも考えてほしい」(延藤さん)とのアドバイスが出ました。

■“形”に残るものを創ることの効果

▽さんかく――グリーンヒル寺田団地に開設されたコミュニティスペースの名前決定を記念して横断幕を子どもたちと制作。完成品は団地商店街の入り口に掲示され、大きさと大胆な明るい色合い、子どもたちの手形などが住民さんたちの目を引いていることを報告。

この活動については、講評において延藤さんから、「形のあるものに表現することで、内面の気持ちが外に表出されて、多くの人たちと想いを共有することができる。表現活動はまちづくりでとても重要だ」とコメントが出ました。

■活動を終える、という局面

▽こはる――10数年に亘って毎月、町田市相原と相模原市城山で高齢者サロンを運営してきたが、メンバーの減少のために今年度いっぱいで活動を休止すると決定したと発表。

休止決定までのプロセスでは、10数年の重みへの「責任感」でなかなか決断できなかった、参加者の方々に申し訳ない気持ちがあったと述べていました。これに対しては、サロンの大本となったゼミの教官だった福屋靖子・法政大学名誉教授から、こはるの活動が地域の高齢者支援の機運を高め、周辺で他のサロンが立ち上がったり、高齢者の見守りやお手伝い活動に発展し、意義が大きかったと発言があったほか、活動のなかで学生が得たものも大きかったはずで成果は大きいとの声も会場から挙がりました。(こはるには、永年の活動に対し「法政大学地域交流賞」が贈られることが決まりました。)

■地域の「活性化」とは?

▽@団地――グリーンヒル寺田での活動で目的としている「地域の活性化」は、「そこに住む人々が、自分たちのために、自分たちで活動を広げていくこと」と「住民主体」のスタンスを掲げました。

「よそ者・若者・バカ者」の学生は変化を起こす起爆剤となれると自認しつつも、現在の「学生主体」または「学生主体+住民の協力」の段階から、次は「学生と住民の協働」、さらには「住民主体」へと進めていきたいと目標を語りました。

 

学生プロジェクトの発表の後、来場くださった連携パートナーの方々のなかから、カフェ部に協力してくださっているグリーンヒル寺田の住民さん、八王子市寺田・館ヶ丘周辺を担当する包括支援センターの方などから、学生が地域に姿を見せることで地域の人々に変化を生み、動きを生み出しているなど、学生たちの活動に激励をいただきました。

つながりプロジェクト:2年 簗瀬大誠さん
昨年度の『城山のトリセツ』(人に着目した地域紹介ガイドブック)に続き、今年度は相模原市城山の自然を紹介するマップづくりに、地域の方々と共に取り組んでいます。3月完成予定!

Commnunity Field:2年 馬屋原 成さん
今年度は団地イベントでの野菜販売にも挑戦しました。来年度は学生側から地域にイベントを提案します!

たまぼら佐野川プロジェクト:2年 宮田康一さん、神田将志さん
グリーンヒル寺田や城山でやったお茶の試飲が好評でした。佐野川に人を連れてくるのが次の目標。

佐野川やまなみプロジェクト:2年 加藤寛樹さん、1年 鈴木啓太さん
ハーブの商品化については、商品開発班をつくって検討を具体的に進めようと考えています。

馬場憲一ゼミ:3年 佐藤光翼さん、上野芹香さん、上野貴朗さん
「野外博物館ツアー(石器時代の住居の遺跡などを巡る)」「八王子の地産地消を考える会」「多摩地域を舞台にした映画上映会」を実施しました。

こはる:4年 御園生美鈴さん、3年 向田佳奈子さん、大滝彩乃さん、1年 池田美央さん
相原、城山で10数年続けたサロン。活動休止後も、メンバーそれぞれが機会を見つけて参加者の方々とのつながりを保ちたいと語りました。

キラキラ星:3年 溝上 太さん、2年 樺山栞奈さん
相模原の児童養護施設を毎週土曜に訪問して、子どもたちの遊び相手になっています。定期的に来てくれるお姉さん、お兄さんとして、子どもたちも安心感・信頼をもってくれています。

Team TAMA:2年 長峰由美さん、岡田友佳里さん
東北の震災以降、宮城県での活動を継続中。訪問回数がいちばん多い石巻市の小渕浜では小学生の遊び支援や中学生向け勉強会、歴史の記録づくりに取り組みました。

たまぼらゆくのきプロジェクト:2年 金子大哉さん、1年 高橋研人さん
町田市立ゆくのき学園で、小学生向けの遊び・学習支援を継続中。チームのオリジナル企画の実施や中学生向け学習支援が次の目標です。

さんかく:2年 神澤志織さん、市村優佳さん
多摩市の諏訪小学校での放課後子ども支援の経験をグリーンヒル寺田に広げました。子ども支援⇒多世代交流⇒地域のつながり、の可能性が見えました。

@団地:2年 小野美瑞季さん
グリーンヒル寺田にコミュニティスペースが開設された2016年度。スペースでの活動の中から、住民さんの「好き」や「得意」を発見して住民さん主体の活動につないでいくことを目指します。

カフェ部:2年 宮里遼大さん、1年 吉野友理さん
カフェ開催場所をグリーンヒル寺田の集会室からコミュニティスペースに移転し、平日開催も始めました。運営協力してくださる住民さんとの連携も深まり、親子連れなど新しいお客さんも増加中!

たまぼら館ヶ丘プロジェクト:2年 青柳佑弥さん、1年 米田海都さん
館ヶ丘団地の「シルバーふらっと相談室」を拠点とした学生の活動も約5年。住民の方々の中から地域のための主体的な活動も出てきています。今後は、まだ関わりを持てていない住民さんとの関係づくりに注目していきます。

たまぼらゆくのきプロジェクトの連携パートナーとしてコメントくださった、町田市立中高一貫ゆくのき学園・ボランティアコーディネーターの吉田さん

会場となったエッグドーム5階ホール内の様子

 

■■■■ 第2部 延藤安弘さん”幻燈会”『物語のように若者と住民が共に育ちあう-大学・地域 ”まちing”を目指して-』■■■■

いよいよゲスト講師の延藤安弘さんの登壇となった第2部。建築を専門として千葉大学や愛知産業大学大学院などの教授を歴任し、NPO法人 まちの縁側育くみ隊 代表理事を務めるなかで各地のまちづくりに携わってきた経験からの講演でしたが、照明を絞った場内でスクリーンに“幻燈”がほの明るく浮かび上がると、大阪弁の独特のリズムで語りが始まりました。

最初に素材となったのは外国の絵本2作品で、「強さ」に「やさしさ」「たのしさ」で対抗するおおかみの兄弟たちの話と、子どものとらわれない発想から「本当に大切なもの」を見出し、捨てられたバスを人々の幸福な居場所に変えていく話でした。これらによって参加者の胸の内の何かが目覚めさせられたところで、まちづくりの事例に入っていきました。

長野での「まちの縁側」育みプロジェクトでは、軒先をまちの人たちにちょっと開放したり、庭に一休みできるベンチをちょっと置くだけで自然に人と人の交流が生まれること、それはトップダウンではなく一人一人から始められることが強く印象付けられました。

延藤さんが現在取り組んでいる名古屋都心部の長者町の活性化では、「会所」という、地域に数百年続く歴史的な公共空間を地域の「宝」として再発見したことがカギとなったことが紹介されました。人々が集まり出会う聖なる場所であると同時に皆にとって安全・安心な場所だった「会所」という存在から、「金もうけより、人もうけ」「にぎわい・つながり・くらしの安心」に立脚したまちづくりのマスタープランが立てられ、そこから人々の心に火がつき、「歩道の木質化」などの具体的な個別テーマの部会が立ち上がっていったことが語られました。その途上でのカルタづくりや大工仕事などの具体的な活動は、人々を混ざり合わせ、楽しくさせ、表現させるといった要素を含んでいたことも繰り返し指摘されました。

京都の協同集合住宅のユーコートの例でも、「住民が主人公」の実践は、池を一つ作るにも長い議論を経ての合意形成が必要で、一面、「煩わしさ」がありつつも、緑地や池のメンテナンスも住民たち自身が協力して行うことが「楽しみ」に転じ、そこでの人と人の関係が子どもたちにも伝わり、成人してからも住みたい「ふるさと」に育っていったことが語られました。

続く質疑応答でも、上のようなまちづくりの大事なコンセプトは「いい写真の撮り方」「大学での学び方」「男性の参加を促すコツ」などの話題にも広がりながらつながっていきました。語られた言葉は、アシスタント役の名畑恵さん(NPO法人 まちの縁側育くみ隊理事)の手でリアルタイムで模造紙に記録されて参加者の理解を助け、最後に、第1部、第2部の総括として、地域づくりをめぐるやりとりが延藤さんによって8つの文に集約されました。

「と」とことん楽しさと自由な居場所づくりを!
「も」元々ある人的・物的資源を発見し、共有もできるキーワードにし、キーパーソン盛り上げよう
「に」にこやかな表情、おだやかな場所、多様な出来事(ヒト・モノ・コトの関係)を写真等で表現しよう
「そ」想像力をもって、学び、出会い、分かち合うと人の心に火がつく
「だ」だんだんと父親が地域活動に得意技をもって登場するオリジナル企画を
「ち」ちがう立場の学生と綬民がリスペクトし合う関係づくりから!
「あ」あうんの呼吸で創造的地域づくりの発展的ロードマップを!
「う」うっとおしいトラブルをエネルギーに変えよう!
⇒⇒⇒ 共に育ちあう:イーブンで開かれた共育へ

頭文字をつないでできたフレーズ「共に育ちあう」の下に束ねられたこれら8文を手掛かりに、学識・教養と経験、人が生きる場づくりへの情熱・ユーモアにあふれた講演を何度も振り返って思い出したいと思います。

幻燈会の導入をする延藤安弘さん

幻燈会:名古屋・長者町での歩道の木質化

幻燈会:京都のユーコート内の通路

フロアとの双方向セッションでの延藤さん

フロアとの双方向セッション中、ステージ上では名畑恵さんによる記録筆記(グラフィカルレコーディング)が行われスクリーンに映し出されました

記録ーその1

記録-その2

記録ーその3

当日の集大成、8カ条のまとめ「共に育ち合う」