
法政大学多摩地域交流センターは1月29日(月)、年度末恒例の学生プロジェクトの活動報告会、『地域交流DAY 2017』を開催しました。初回の2014年度から4回目。学生プロジェクト数は15になり、活動地域や活動分野が広がっただけでなく、学生が活動について語る言葉も視点が多様になると同時に、地域や連携してくださる方々への想いの深まりがうかがえました。
後半は、会場全員で約1時間半、ディスカッションを行いました。活動の参加者をいかに増やすかや、活動の「単位化」といったトピックを入り口に、学生と大人たち双方の様々な意見や想いを交換でき、これからの活動でもコミュニケーションをさらに深めていきたいという思いが新たになりました。
前半:学生プロジェクト活動報告
当日、会場に集まったのは、発表する学生たちも含め100名超。会場のホールも、発表者と聞く側の距離をより近く、フラットな雰囲気にするため、ステージを使わないレイアウトで開催しました。
今年度の発表からは、次のようなポイントが浮かび上がりました。
■地域側の状況が変化。どう対応するか?
▽Team Tama…宮城県石巻市の被災地支援に取り組んできたが、活動場所としてきた仮設住宅が、復興住宅に人々が移転して閉鎖される。そこで、これまで被災地での活動で教わった「防災の重要性」を、大学の近隣地域の方々と学生たちに伝える活動を開始していく。
▽@団地…活動するグリーンヒル寺田では、今年度、コミュニティスペースで住民の方々が自らボランティアで週4日、カフェを運営するようになった。住民の方々主体で動き始めた今、学生として何をすべきか模索中。
■チームのメンバーをどう維持していくか?活動の参加者をどう増やすか?
多くのチームに共通する課題でした。
▽たまぼら佐野川プロジェクト…活動の魅力を伝えることで、参加者を増やしたい。
▽たまぼら・ゆくのきプロジェクト…新歓の時期は多いが、だんだん少なくなってしまう。
▽@団地…チームづくりで悩んだ。地域での学生の役割が不明確になり、1年生との共有が難しくなった。
■学生ならではの役割
▽つながりプロジェクト…地域の高齢者の方々などのお宅を訪問し、クリスマスソングを子どもたちと楽器で演奏する「サンタDE演奏会」を実施。高齢者と子どもたちをつなぐ学生ならではの企画。
▽たまぼら館ケ丘プロジェクト…学生だから心を開いてもらえる、その力を発揮して「会う・話す」ことを軸に、住民さんに密着した活動を展開。住民グループの方々が計画する地域食堂のプロジェクトにも連携していく。
■地域の方々との出会い・対話でステップアップ
▽Community Field…城山のブルーベリー農家の方との出会いをきっかけに、草刈り機を導入したり、イタリアンレストランのご主人とつながり野菜提供に道が開けた。
▽たまぼら佐野川チーム…事情により1年生がチーム運営を担うことになり、連携パートナーの佐野川地域おこしの会の代表・藤本さんとじっくり対話。「地域に新しい風を」「学生に成長を」という藤本さんの考えを知って、関係の基盤ができた。
■「居場所づくり」、テーマとしてくっきり浮上
今回、相原の「スターキッズ」という地域向けスペースと連携してカフェ活動を始めた「ふなで」と、片倉で月1回地域食堂に参加している「こすもす だれでも食堂」が加わったことで、これまでも団地や子ども対象の活動の中に流れていたテーマではありますが、「居場所づくり」というテーマの軸がさらにはっきりと浮かび上がりました。
▽こすもす だれでも食堂…人を「何ができるか(機能)」で評価するのではなく、「いてくれることそのもの(存在)」がありがたいという考え方を貫いて活動したい。優劣や上下を決めないことが、だれもが居心地よくいられることにつながる。
写真:各チームの発表者たち(発表順)
後半:学生と来場者のみなさんのディスカッション
今回目玉として設けた会場全員でのディスカッションタイム。地域交流センター長の図司直也・現代福祉学部教授が進行しました。
まず、多くの学生チームが悩む「参加者の不足」の問題からスタートしたところ、地域側にも通じる問題と見えて、参加の呼びかけ方やミーティングの工夫など、多くの解決のアイディアが飛び交いました。
■活動の参加者をいかに増やすか
学生たちが語る実情は、
・入学して間もないころに登録したメンバーのうち、3分の1くらいしか継続しない。
・最初は10人ぐらいいたのに夏ごろになるとがくんと活動参加者が減った。
・活動に参加する人数が減ると、できることが限られてくる。また、住民さんの状況など現場に行かないとわからなくなり、次の活動につながらない。
といったもので、悪循環にもがく切実さが伝わってきました。
それに対して会場から出たアドバイスは、
・ミーティングの時、次の回に考えてきてもらう課題を出せば、次も参加しよう思って、継続するのじゃないか。
・地域の年間の行事予定を早めに共有して、個人やチームの予定と調整しやすくするべきだ。
・地域まで行きにくければ、使ってない自転車を活用するといった方法も考えたらどうか。
といった具体的なものや、学生と地域の連携の在り方に着目して、
・学生の「できること」「やりたいこと」「地域が求めていること」のバランスの再点検をするといいのではないか。(日野市ボランティアセンターの方)
といったアドバイスも出ました。さらに、
・活動の現場に行って、どんな喜びがあったか、感動があったのか、何を感じたのかをメンバーに伝えていくことが大事。
と、毎回の活動での内面の変化を重視しようというアドバイスもありました。あるチームのリーダーからは、
・新入生の頃は、地域がどうだと言ってもぴんと来ないので、伝え方を工夫して、初めは「就活のネタになるよ」といった現実的な話で引き付けて現地に行ってもらい、少しずつなじんできてから、活動を通して仲間が増えた、といった別の側面の成果に気づかせるのがいい。
という意見もありました。
■地域での活動を単位化すべきか!?
ディスカッションが一段と沸騰したのは、活動で何を得られるかという流れで、地域の方から「大学は地域で活動する学生に単位を与えるべき」という意見が出てからでした。
賛成派の多くは来場者の大人たちでした。
・海外の大学では社会での活動で単位がもらえるのは当たり前。人格形成に必要なこととして単位化すべき。
・フィールドワーク(学外での活動)にはフィールドに出た人にしかつかめない学びがあるのだから、多摩キャンパスの魅力の一つとして、単位化して打ち出すべき。ほかにも単位に限らず、論文のテーマにできるとか、バイトのための時間を惜しむ学生がいるなら、ボランティアすれば1食提供といった”実利”があっていい。
一方、反対はむしろ学生から多く上がりました。
・単位目当てという、言わば経済的な損得勘定で行動することになる。現代福祉学部の1年生も義務化されている4回の活動を終えると急に来なくなり、現場として迷惑だ。
・義務感や「やらされ感」をもって活動するのはどうか。
・何をすれば及第点の60点をクリアしたと評価するのか、評価軸が疑問だ。
こうした意見には、日頃から、他人からの評価や実利を求める気持ちとは違う別の価値に支えられて活動を続けている学生たちの想いが垣間見えて、熱いやり取りとなりました。
■センターが地域間のつなぎ役に
地域側の困りごともうかがったところ、学生と活動する上での安全管理や緊急時の体制についての質問が出たほか、学生が活動する各地での取り組みをセンターが媒介して、地域間をつなぎ各地の課題解決が前進させるような機能を果たしてほしいといったセンターへの期待を込めた要望もいただきました。学生と地域とセンターの連携をさらに深めて、新たな活動や関係にチャレンジしたい、そんな想いを共有して会を終了しました。